2 個人情報への意識を持たない読者参加雑誌 〜 「ファンロード」


今にして思えば、私にはそれ以前からつきまとわれる十分な下地がありました。
それは「批評家」という私に向けられた揶揄からも見て取れます。



私は学生時代から、「月刊ファンロード(銀英社)」という、オタクの人向けのファン雑誌に投稿をしていました。

一度休刊した後最近になって復刊したこの雑誌は、プロと言うよりもアマチュアを中心として扱う雑誌で、その 記事内容は、ほとんどを読者から投稿されたハガキによって作られていました。現在もそうですが、こうした ファン活動を行う人々には、同人誌や現在ではネットの個人サイトなど、活動の場があります。そうした形で 作品を作る力を持った人たちが、ゲームや漫画、アニメなど、複数のメディアのキャラクターについてのファン 活動として投稿を行い、それによって紙面が出来上がるというものでした。

私自身も投稿は行っていましたが、必ずしも全てが掲載されるわけではありませんので、そうした活動を続ける のに、個性を出すためやストレスにならないようになど、いくつかの工夫をする必要がありました(何しろ ハガキを送ること自体は勿論、たとえ依頼を受けて作品が掲載されたとしてもギャラが発生するわけではあり ません)。
そのうち、アンソロジーやゲームショーのレポート漫画を描くこともあり、他の投稿者の方に名前を書いていた だくことや、おそらくこの雑誌の読者なのであろうプロの作家の方に自分の事を書いていただくもありましたが、 それはあくまで、この雑誌の紙面上や例外的な一部だけ、という狭い世界の話だと割り切っていました。



ただ、セガのゲーム機セガサターンが発売された当時、私はこのゲーム機の感想漫画を書いたことがありますが、 その時は、ちょっとセガよりに書きすぎたかもしれない、という反省をしていました。その後の紙面上で、何と なくゲーム機に対する派閥的な雰囲気が見られるように思ったからです。

しかし、自分の書いたものが一体どれだけ人目に止まっているのかわからないのに、そこで自分から気を使う ような発言をするのは思い上がって見えはしないか?と言う懸念(実際、投稿者の人たちの間には、ちょっと した上下関係のようなものもあったように思います)や、世間的にどうしてもプレステ側に流そうとする動きを 見せる雑誌も(前述のように)ありましたので、あくまで趣味の範囲の物事で、自分の意志を体制に合わせる よう強要されるのはどうなんだろう、という抵抗もあり、結局自分からはこうしたことに言及するのはやめて おくことにしていました。

実際、当時この雑誌の編集者(現在も在籍しているのかは不明)「小吉」氏には、「お前、そんなに自分が 目立ってると思ってんのかよ!」と言われていましたので、ならば気にするべきではないなと考えていました。


(もっとも、全く気にすることがなかったわけではなく、ゲームショーのレポートを描いた時は、なるべくPS やSSという移植先で偏らないよう気をつけていたつもりでしたが、逆にネット上でそうした描き方がPS向け のソフトをSSに引っ張るために媚びているのではないか、というような書き込みを名指しでされ、その時は かなりのショックを受け、反動で当時面接を受けていた会社などでいささか無礼な態度をとってしまい、その事 は今も心に引っかかっています)


いずれにせよ、紙面に掲載された私の投稿の数はたかが知れたものでしたので、それほど深くは考えていません でした。



しかし、前章でのゲーム会社の一件以来、盗聴された私の発言があちらこちらに飛んでいたことは、私も意識 するようになっていました。同時に他人に対し考え方を押し付ける、まるで「批評家」ででもあるかのような 認識になっていきつつある事も気づいていました(というか実際私の書いた事やしゃべった事は批評として 扱われていたようです)。

最もわかりやすかったのが、当時難解な最終回を迎えたエヴァンゲリオンについてです。

前章で私が喚いた事と言うのはその最終回の解釈についてのことで、私自身は盗聴されたその内容がどの程度 正しいことなのかはわかりません。ただ、当時この議論はかなり盛り上がりを見せていましたから、自分の発言 など、多少喚いたところで簡単に埋没するだろうということと、明確な答えを見せないやり方を行うのは受け手 の解釈に広い自由度が与えられているという事なのだろう、と考えていました。
ですから、そもそも盗聴された発言ということもあり、発言したこと自体は特別問題ではないだろうと考えて いたのです。


しかしまもなく、私に盗聴や盗撮を仕掛けていた連中は、ひたすら話を大げさにしたがっていると言うことも 判ってきました。

この時の盗聴発言に限らず、以前ファンロード誌に投稿した際ハガキに書いた「メッセージ云々」という文言も そこに加わってきて、関係者のインタビュー記事には「だからメッセージなんか関係ないんですよ!」と怒りを あらわにする様子も見られました。自分の発言が作品の製作側にまで影響を及ぼし始めたのです。



さすがにこうなってくると、本来関係のない立場の方々にご迷惑がかかっているということを意識せざるを得ず、 私は自分が投稿にどんなことを描いていたか確認することにしました。

ところがバックナンバーを調べてみると、どこにもこの時書いたハガキが掲載された形跡がありません。どんな に探しても見つからないのです。
最初は自分の思い過ごしだったのかと思いました。ですが、話の筋道を追っていくと、どう考えても自分の発言 内容が扱われているとしか思えません。

そのうちに注意して見ていくと、このエヴァンゲリオンに限らず、その他の投稿に関しても没になっているはず のハガキの内容が流れていることに気がつきました。私の書く文章には一定の癖があり、私自身もそれを自分の 個性としてそのまま文章を書いていました。それを真似してくれる人たちもたまにいたのですが、よく調べると、 これもやはり没になったハガキに書いていたはずの内容が相当数含まれていることがわかりました。しかもそれ は、前章でのメーリングリストの書き込みよりずっと以前にまでさかのぼったのです。

前章でも書いた「某ソフト会社のプランナー」も、文中で「批評家をやっていいのは実績のある人間だけだ」云々 ということを書いていましたが、要するに、こうした形で流出したハガキの内容が、そのまま「批評」という扱い で流れ続けているのです。



こういう扱いになる理由はいくつか考えられますが、簡単に言ってしまうと「自分が良いと書いたものが実際に 効果をあげてしまっていた」から、という事だと思います。

もともとこの雑誌はファン活動を扱う雑誌なのですから、その時扱うものについての良い悪いを具体的に書いて いくのは当たり前のことであり、それを批判されるいわれは何らありません。しかし実際にそうした内容が的を 得ていたり成果を挙げるようになった場合、現場の仕事を否定しているように受け取られたり(プロとしてどう なんだとは思いますが)、過剰な影響力を持ち始めることもあるかもしれません。

ましてや、組織的なプライバシー侵害を業界内で公然と行うためには、何らかの大義名分も必要でしょう。 メーリングリストでの私の書き込みが、こうした盗聴情報に商業的な意味合いを持たせる具体的な根拠とされ、 単なる嫌がらせにご大層な「意義」があるかのような錯覚を与え、あげく特定のプロジェクトに資金を導入 させるための道具として利用されていったのです。



とにかく不安になった私は、このファンロードの編集部に問い合わせをしました。電話に出た女性に「この雑誌 では没にした投稿を外部に流出させたりするのですか」と質問すると、彼女は「そんなことがあるわけない でしょう!」と大変な剣幕で否定しました。私自身それが当たり前であり、質問したようなことは、断じて あってはならないことだと思います。
ですから全く納得はしなかったものの、その時は彼女の剣幕に押される形で電話を切りました。

ところがその内に、実際には流出しているのが投稿したハガキにとどまらないことに気がつきました。

ソフト会社を辞めたこの頃、すでに私はファンロードへの投稿を行っていませんでした。ですから、投稿に ついて問題が発生することはもうないと考えていました。

しかし一方で私は、一部の投稿者の方とは文通のような形で手紙のやり取りを行っていました。その内に、今度 はこの方とやり取りした手紙の中に書いたことまでが流出し始めたのです。
この方とは直接住所に対して手紙を送っていましたから、メールのような漏洩の可能性はありませんし、あいだ にファンロードの編集部を挟んだこともありません。ですが、この方と私との接点はファンロードしかありません。 と言うことは、この編集部は完全にプライベートの手紙をこの方から入手してまで、私の書いたものを流出させた ことになります。

これまで以上に度を越した、完全なプライバシーの侵害に気味が悪くなった私は、この方へ手紙を出すことを 止めました。

すると今度は、そうした私の態度をまるで「傷ついた悲劇のヒロイン(※ 私は男性です)」ででもあるかの ようにモチーフ化した漫画まで現れはじめました(この部分が流出した経緯にはまた別の事情があるのですが、 それは後述します)。

何が起こっているのか、ということは勿論、プライバシー侵害が公然と行われ、私生活が当然のように誰も彼も に閲覧され、自分の人生がどんどん「劇場化」していくという状況に、私は大変な恐怖心を感じていました。
ですが、これらのことはその後自分の身におこる嫌がらせの、ほんの始まりでしかなかったのです。



「始まり」と書きましたが、ファンロード誌によって行われたこれらの「個人情報漏洩」は、その後のゲーム、 漫画、アニメ業界に渡る私へのプライバシー侵害に繋がっていくことになり、参加者の罪悪感を麻痺させ、本来 ありえないような衆人環視への言わば「下地作り」になっていきました。

つまり、現在の私を取り巻く集団ストーカー被害を作る原因になったのは、このファンロード誌なのです。
それどころかもし後述するように、日本に蔓延するようになった「集団ストーカー産業」を考案したのがセガで あるならば、軽はずみにも、そこへ繋がる道筋そのものを作ったのがこの雑誌と言うことになります。

いずれにせよ、読者からの投稿によって成り立つ雑誌が、そうした読者の個人情報をおもちゃのように扱うという のは根本的に職業意識が欠如しているとしか言えません。ましてや、個人的な手紙まで流出させるって言うのは 一体どんな権利があると考えての事なんでしょうか。
投稿していたと言うだけで、俺の人生はこの雑誌の所有物にでもなっているということなのでしょうか。ふざけ るな馬鹿野郎!

この雑誌は下は小学生ぐらいから読者、投稿者を持っています。常にそうした目下ばかりを相手にしているうち に、言葉の上ではそうは言わなくても、ほとんどそれに近い思考がこの編集部にあったのは間違いないでしょう。

俺はセガに対して恨みを抱いているのは勿論ですが、それはこの雑誌に対しても同様です。こうした10年以上 前に書いた内容をつい昨日のことのようにほのめかされることを思えば、現在もどこかでこの時のハガキや手紙 がさらされ続けているはずです。電話で問い合わせたあの時の女性の態度を思い出すと、よくもぬけぬけとあんな 態度が取れたもんだと腹立たしさがこみ上げてきます。
ですがこの直後から始まった常軌を逸した嫌がらせの日々を考えれば、それだけでは十分と言えませんでした。

     


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